どこの現場に行っても「AIでDXを推進しよう」という話。
エージェント元年。
ChatGPTが登場したとき、プロンプトを入力すれば綺麗な回答が返ってくることに誰もが感動した。
社内チャットボットを導入して、「これで我が社のDXも一歩前進だ」とみんなで胸躍らせたものです。
24時間365日、嫌な顔一つせずご機嫌に何でも答えてくれる。
いつしか私たちはチャッピーやAI様などと形のない人工ニューロンを崇めるようになった。
そろそろAI神社もできるだろう。
あれから数年。
私たちは気づき始めています。
「ブラウザでわざわざチャットを開いて、AI様にお伺いを立てる」という行為そのものが、
すでに日々の業務の中で、小さくない「面倒くささ」になっていることに。
結局、現場のPCモニターの隅には、相変わらず手書きの「付箋」がペタペタと貼られたままだったり、
「〇〇社からのメールは、添付のPDFを開いて金額を確認してから基幹システムに入力すること。
※ただしAパターンを除く」といった、泥臭い人間のルーティンが文字で埋まっている状況。
画面の向こうのAIがどれだけ賢くなっても、人間がそれを「呼び出して、指示を出し、結果をコピペして古いシステムに入れる」役割を担っているうちは、現場の人たちの負担は1ミリも減ってないどころが、なんか地味にやること増えてない?
このストレスが、人間の指示を待つことなく、自律的に裏側で状況を判断してタスクを完遂してくれる「AIエージェント」が誕生した背景だと思う。
猫も杓子もAIエージェント
人間がAIにプロンプトを打ち込む必要がない、 共有メールアドレスに注文書が届いた瞬間、エージェントが自らそのメールを読んで意図を解釈する。
基幹システムの在庫データを勝手に見にいって、過去の取引履歴から「いつもの値引き率」を推測して見積書のドラフトを作る。
そして、Slackに「これで承認して大丈夫ですか?」と、担当者に完成した成果物だけを放り込んでくる。
人間がやることは、AIの「アウトプットの確認と、最後のワンクリック」だけ。
AIを道具として使う側から、頼れるチームメンバーをマネジメントする側へと役割がシフトする。
これが、AIエージェントによるDXのリアルです。
最強です。もう少子化も教育もワークライフバランスもハラスメントも怖くない。
そんな部下が欲しかった。
……と、言葉で言うのは簡単なんですけど。
実際、私たちが前線で出会う素敵な企業の多くは、30年以上前に作られた「AS/400(IBM i)」のような、堅牢すぎるレガシーな基幹システムで世界を回しています。
あの漆黒の画面に緑色の文字が並ぶエミュレータの奥深くに、企業のすべての重要データと、
マニュアル化されていない数千通りの「現場の暗黙知」が眠っています。
APIなんていう、おしゃんなものもない。
かといって「古いから全部作り直しましょう」も違う。
そのシステムが何十年もその会社を、日本の産業を支えているのも事実だから。
AS/400のデータを安全に吸い上げる連携バッチを裏で走らせて、データ活用基盤へ綺麗に流し込む。
最先端のAIエージェントが自律的に動くためのワークフローをLangChainやLlamaIndexで構築して、
レガシー基盤の複雑なルールをRAG(検索拡張生成)に泥臭く学習させる。
そして、それらの綱渡りのようなデータ連携をGoで堅牢に制御しながら、現場の人間が直感的に扱える美しいUIをNext.jsで被せる。
最先端のAIという「切れ味の鋭い刃」を、AS/400という「歴史ある盾」とどう滑らかに融合させて、
現場の人たちが息をするように自然に使えるツールに落とし込むか。
この、古いものへの敬意と、新しい技術への挑戦が交差するカオスなインテグレーションにこそ、
現代のエンジニアリングの本当の難しさと、鳥肌が立つような面白さが詰まっています。
しらんけど。
バズワードにちょっと飽きた、綺麗事の技術論に退屈しているエンジニアと一緒に、
私たちは今日も、人間のリアルな営みの真ん中で、最高峰のテクノロジーを泥臭く滑り込ませています。